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旅日記補遺 2 大阪府立国際児童文学館  2009.11.27

テーマ:旅日記 - ジャンル:旅行 Tag [旅日記]
11月23日、以前の旅で訪問できなかった大阪府立国際児童文学館を見学してきたので、今回はその報告を。

この国際児童文学館は、大阪府吹田市の万博記念公園内にある。
じつは4月に大阪に来たときにも、ここには立ち寄るつもりだったのだが、駐車代が1200円と高価なうえ、時間的にも余裕がなかったため、中止してしまった経緯がある。

今回は直接万博記念公園には行かず、付近の南茨木駅に車を停め、そこからモノレールでアクセスすることにした。
まあ、南茨木駅の駐車代やモノレールの運賃など含めると、普通に万博公園に停めるのとそれほど変わらない金額になってしまうのだけど、モノレールに乗ってみたいという思惑もあったためよしとしよう。
南茨木駅から公園東口駅までモノレールを使い、そこから10分ほど西へ歩くと国際児童文学館に到着。

さて国際児童文学館について。
開館は1984(昭和61)年。
中学生以下を対象とした資料を網羅的に収集している児童書の専門図書館で、蔵書数は図書・雑誌・紙芝居を含めて70万点を誇る。
これは県立図書館の蔵書数としてはかなりの規模であり、児童書分野に限れば国立国会図書館の国際子ども図書館の同45万点を大きく上回る。
日本最大規模の児童図書館だ。

iiclo1.jpg

ただ実際に足を運んでみると、意外にも建物はそれほど大きくない、というのが正直な印象。
開架は2フロアだけで、1階は絵本や紙芝居のある低年齢向けのコーナー、2階は中学生以上を対象とした閲覧室となっている。
資料の貸し出しは、1階にあるもののみが可能で、2階閲覧室の資料は貸し出し不可。

iiclo2.jpg
こちらは、玄関脇にあるオブジェで、ブレーメンの音楽隊をモチーフにしている。

訪問した時にたまたまバックヤードツアーの募集があったので、飛び入りで参加させてもらうことにした。
写真こそ撮影できなかったものの、職員の方の解説を聞きながら、書庫を見学することができたのは大きな収穫だった。
書庫は4階層あり、電動の周密書架と固定書架がある。
資料の中でもとくに戦前に発行された古いものについては貴重書庫に保存されている。

まず驚いたのは、資料の整理・保存方法が変わっていて、十進分類を使用していないという点。
書庫の書架配置は発行年ごとに区分されており、背のラベルにも分類記号ではなく、発行年を示す数字が書き込まれている。
歴史研究などでは年代ごとに資料を探すケースが多く、また新しく発行された資料を棚の途中に割り込ませる必要も無いため、この配置法は意外に便利なようだ。

また本には一切ブッカーを掛けず、代わりに取り外し可能なビニールカバーをつけている点も特徴的。
児童書にはカバー裏に細工が施されている本が多く、ブッカーで固定してしまうと、それらが見られなくなってしまうという理由がひとつ。
さらに驚いたのは、児童文学館では資料に付属していたオビやチラシ、アンケートはがきにいたるまで一切を捨てずに保存しているため、オビをつけたまま取り外しができる状態にしているという理由だった。
確かにオビの文句を見れば、その作品の発行当時の評価がうかがえるし、チラシを見れば同時代のほかの作品も参考できて、貴重な資料となるだろう。
また雑誌の再製本や、バーコードの貼り付けも行わず、可能な限り出版時の状態を維持する形で保存しているそうだ。
ここまで徹底した保存方針を貫いている図書館は少ないと思う。

児童文学館の所蔵資料は多岐にわたり、その中にはここでしか見られないものが多い。
そのひとつが、戦前から戦後の一時期に流行した、街頭紙芝居。
現在の紙芝居のように出版社が印刷したものではなく、個人製作によるものが多く、手描きで一枚一枚描かれている。
また紙芝居本体とともに保存されている紙芝居舞台には、売り物の駄菓子を入れておく引き出しがあって、商売道具であることがうかがえる。
これらは当時の世相を知るための歴史的資料といえる。

それから収集資料には漫画も含まれる。
書庫では、少年サンデーの初版をはじめとして、貴重な漫画雑誌をいくつも見ることができた。
そういえば児童文学館に対して、漫画図書館だと非難をした人がいたらしいけれど、漫画を所蔵してはいけないとする理由がよくわからない。
漫画だって時代をあらわす貴重な資料だ。
数十年たてば歴史的資料になる。
特に現代のように、いわゆるサブカルチャーが生活に身近なものになっている時代では、これ抜きにして現代文化を理解することが難しいのではないかと思う。
50年100年先に、生活史として今の時代の文化を知ろうとしたら、漫画をはじめとするサブカルチャーは欠かせない要素のはず。
確かに、一時的な娯楽のために図書館が漫画を提供するのであれば問題かもしれないが、児童文学館の方針はあくまで研究資料・文化財として後世に伝えることだ。
そしてその収集・保存方針は上述のとおり徹底していて、ブレが無い。
作品の価値は後世の人間が判断するべきことで、資料を収集・整理・保存し、後世へ残すこと自体が今重要なことだと思う。
このようにサブカルチャー作品を収集していく機関がなくなってしまったら、将来散逸して閲覧できなくなる資料が続出するだろう。
(現に、たかだか十数年前の作品が失われ、内容が把握できないという事態がすでに起きている)
個人的にはこれらの作品が、無価値と判断されて大半が失われてしまった浮世絵の二の舞にならないことを願うばかりだ。

知っている人には今さらな話題ではあるけれど、この国際児童文学館は、2010年3月で閉館、廃止となる。
1月以降は蔵書の移転作業があるため、実際に開館するのは12月27日までだ。
このブログではあまり政治的な話題を出したくないので詳しくは触れないけれど、この図書館の廃止は国家的な損失だと思う。
前述したとおり、児童文学館の蔵書は70万冊という非常に大規模なもので、この図書館にしかない貴重な資料も多数ある。
そのうちの7割が出版社や個人からの寄贈によるものだそうだが、図書館の廃止にともなって、寄贈の取りやめや資料の返還を求める権利者も多いと聞く。
また、蔵書は中央図書館に移管されることになっているが、これほどの規模の蔵書がスムーズに移行できるのか疑問だ。
物理的なスペースのほかにも、保存環境の問題だってあるし、これから先、今と変わらないレベルで確実に整理・保存していくことができるのか不安に感じる。

資料だけではない。
バックヤードツアーで案内していただいた司書職員は非常に優秀な方だった。
解説は要点がまとめられていてわかりやすく、参加者から発せられた相当突っ込んだ質問にも即座に対応していた。
個々の資料に精通することはもちろん、運営にかかわる経験を長い年月をかけてつまなければ、このようにはなれないだろうと思う。
とても一朝一夕で身につけられるような技能ではない。
今後このように有能な司書の後継を、どのように育成していくのか、課題は多いだろう。

国際児童文学館は、蔵書の質・量、司書の能力、どれをとっても、小生が今まで見てきた中でもトップレベルの図書館だった。
このように優れた図書館が、今年一杯で閉館・廃止というのはいまだに信じられない。
本当に残念だ。

ロビーの掲示板には、各界著名人から寄せられた、廃止反対を訴えるメッセージが多数掲示されていた。
宮駿氏のメッセージ。
「封印する形でも残せないでしょうか 価値は後世の人が決めます のこすことが歴史への責任と思います。」



コメント(2) | トラックバック(0) | 旅日記後記 旅の始末 | 編集

コメント

実にタイムリーな話題提供ですね。
私も次の金曜日に行く予定でした。
参考にさせていただきます。

2009.11.29 | URL | 明日に架ける橋 #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

児童文学館は、大規模な児童書専門図書館という稀有な例で、見所は非常に多かったです。
つくづく閉館が残念でなりません。
やはりアクセシビリティの悪さが致命的だったんでしょうかね。

記事の補足となりますが、1階の児童室は書架の配置がユニークでした。
フロアや書架の高さに差がつけられていて、立体的な配置になっています。
(最上段には身障者用の昇降機もありました)
子どもにとっては秘密基地感覚で楽しめるでしょうね。
ちなみに絵本の配架は、珍しいことに出版社順でした。

うってかわって書庫は、専門図書館らしい圧巻の蔵書量でした。
出版年順に分けられた書架に、資料が整然と並べられている様は、すごい、の一言です。

2009.11.30 | URL | 九曜玄猫 #- [ 編集 ]
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